山エピソード ペース

登山の時に欠かせない物として地図があります。登山用の地図やガイドブックにはコーズタイムが記載されています。ここからあそこまで大体何分で着くのかの目安として書かれています。登山メインのブログを書かれれている方や、すごい方の著書等でもよく、コースタイムの半分で、とか、コースタイム5時間のところ4時間で、とか書かれていたりして、健脚ぶりを表すのによく使われます。初心者の頃は気にしてました。頑張ってコースタイムよりは早く着こうとか考えておりました。

ある時穂高に登った時のこと。一人のおばあさんを意気揚々抜かして行きました。初心者の私は、お年寄りでひょこひょこ歩いて穂高か槍を目指しておられる、すごいな、と思っておりました。詳しくは覚えてないのですが、どこかで休憩していると、そのおばあさんがひょこひょこ追いついて来られました。するとおばあさんは休憩もせずに抜かして行かれます。休憩しないんだ、と思っておりました。結局、涸沢(穂高登山の拠点。上高地から涸沢で一泊、翌日穂高へ登るのが一般的)まで、抜きつ抜かれつを繰り返し、ほとんど同じ時間に涸沢へ到着しました。

初心者の私は、そこで思い知りました。実力もないのに、コースタイムを気にして実力を上回るペースで、ガーと行っては疲れて休憩、ガーと行っては疲れて休憩と、殆どの休憩を取らず、ヒョコヒョコマイペースでトータルではほぼ同タイム。でも、当日の疲れはおそらく雲泥の差があるのでは。そう考えると、ペースを考えることの重要性は明白です。

そこから、計画を立てるのにコーズタイムは重要ですが、タイムを縮めることにこだわらず登ることにしました。最初はゆっくりすぎるくらい、ペースを重視し、抜かれても気にせず、景色をゆっくり眺めながら余裕を持って登る。これで大分疲れ方が違う。こういうちょっとしたコツでいつまでも登山が楽しめたらいいなと思います。

もう一つ。湖西に武奈ヶ岳という山があります。御殿山ルートというのがあって、のっけからかなりの急登です。登り始めると、中高年グループで10人くらいの団体に追いつきました。追いついたと言っても速度差がかなりあった訳ではなく、こちらも4、5人で行っていて、しかも急登なので、ゆっくりついていこうと思っていました。すると前のグループのおばさん一人が我々に気づきました。「ああ、ごめんね、抜いていって」と言われましたが、急登で10人も抜いて行くのも大変ですし、ペースもそんな違わないので「ああ、僕たち遅いんで、大丈夫です」と返したのですが、謙遜と取られてしまったようで、口々に「若いから早いわ」、「おーい、後ろ抜くから止まって」「若いからなぁ」など。いやいや大丈夫です、と、なんども言ったのですが、止まって道を譲られて、抜かさざるを得ない状態になってしまいました。仕方がないので、すいません、すいませんと、10人くらいを小走りで抜き、追いつかれないように、実力よりハイペースでしばらく登りました。急登を駆け上がるように登ってしまい、ついにうちのグループから「もう、無理、休もう」と声が上がり、急登終わってすぐ、休憩。しばらくすると、抜かせていただいた、グループが上がってこられ抜かされます。かなりバツの悪い思いでした。それから、接近しすぎないよう頂上まで。

登山には色々な楽しみ方があり、目標や、やりたいことも千差万別です。100名山踏破を目指したり、雪山が好き、沢登りが好き、クライミングだ、トレイルランだ、未踏峰だ、と。こだわりもいろいろ。テント泊だ、コースタイムだ、などなど。初心者の頃はあれやりたい、これも、あれもと考えていましたが、今は山は逃げない、マイペース、マイペースと考えるようになりました。